現代サッカーにおいて試合を作る「司令塔」の位置は以前であればトップ下の選手が行うものでしたが、ビルドアップの起点は年々ポジションが下がっており、今ではディフェンダーがしっかりと試合と作っていくことが重要になっています。
その影響はゴールキーパーにも及び、現代サッカーにおけるゴールキーパーはシュートストップやハイボール処理といったセービングの仕事だけでなく最後方からパス回しに加わる事が求めれますよね。
そんな現代型のゴールキーパーの中でも現在世界でナンバー1と言ってもいい技術を誇るのがマンチェスター・シティに所属するブラジル代表エデルソン・モラレスです。
今回はペップ・グアルディオラの戦術に欠かせないエデルソンのプロフィールやプレースタイルを見ていきたいと思います。
エデルソン・モラレスのプロフィール
名前ーエデルソン・サンタナ・ジ・モラレス(Ederson Santana de Moraes)
国籍ーブラジル、ポルトガル(代表はブラジル)
出身地ーオザスコ
生年月日ー1993年8月17日
身長ー188cm
体重ー89kg
ポジションーGK
利き足ー左足
エデルソンはブラジルのサンパウロ州にあるオザスコという街出身で、幼い頃は同州の名門サンパウロFCの下部組織でプレーしていました。
その後2009年にブラジルと同じ言語圏であるポルトガルのベンフィカに移籍、リヴェイロン、リオ・アヴェといったポルトガルのクラブをいくつか渡り歩いた後、ベンフィカに戻って2015年にトップチームデビューを果たします。
その頃のベンフィカのゴールマウスを守るのは元ブラジル代表の守護神ジュリオ・セーザルでしたがシーズン途中でセーザルが怪我をするとエデルソンが起用され、以後正守護神として定着することになります。
そしてベンフィカでスタメンに定着した頃、欧州チャンピオンズリーグで当時ジョゼップ・グアルディオラが監督を務めるバイエルン・ミュンヘンと対戦した際にエデルソンを分析したグアルディオラがエデルソンのプレースタイルをいたく気に入り、2017年に彼が監督を努めるマンチェスター・シティへの移籍が決定します。
背番号は「31」ですね。
シティ加入後は序盤からスタメンに定着、破竹の勢いで勝利を重ねる2017-2018のマンチェスター・シティにおいて欠かせない存在となっています。
またエデルソンはベンフィカのユースでプレーしていたためポルトガル国籍も持っていますが代表チームはブラジルでプレーしています。
・サンパウロの下部組織出身
・ベンフィカでトップチームデビュー
・シティでもスタメンに定着
エデルソン・モラレスのプレースタイルと特徴は?
GKとしては世界トップクラスのパス技術とテクニック
エデルソンのゴールキーパーとしてのプレースタイルと特徴は何と言っても「ビルドアップセンス」と「足元の技術」、「フィードの正確さ」でしょう。
エデルソンは元々サイドバックでプレーしていたフィールドプレーヤーであり、ブラジル人らしくおよそゴールキーパーとは思えない足元のテクニックを持っている選手なのです。
現代サッカー、及び現在マンチェスター・シティの監督を務めているグアルディオラにとってエデルソンのようなゴールキーパーのビルドアップスキルはセービング能力と同じくらい重要な要素です。
シティ就任直後からそれまでゴールマウスを守ってきたイングランド代表ジョー・ハート(足元の技術がいまいち)を冷遇し、カバジェロやバルセロナから移籍してきたクラウディオ・ブラボを起用したことからもその重要性は伺えますよね。
グアルディオラ戦術は言うまでもなくポゼッション重視の戦術で、確実にボールを繋ぐためにセンターバック2人がボックスの端まで開きアンカーが降りてきてビルドアップをします。そうすることで両サイドバックが高い位置を取る事ができ、攻撃がスムーズに進むからですね。
しかし相手チームもそれは分かっていますから、ペップ率いるチームが後方でボールを回そうとするとアタッカー達が高い位置から猛然とプレスをかけていきます。モウリーニョレアルがバルセロナにやったように、クロップドルトムントがバイエルンにやったようにです。
そこで重要になるのがゴールキーパーですね。
プレスを掛けられたディフェンダーはプレスを交わすためゴールキーパーにバックパスをしてビルドアップをやり直すことになります。しかしそこで戻されたボールを焦って前にドカンと適当に蹴ってしまうとセカンドボールを拾える確率が五分五分で攻撃が終わってしまう可能性もあります。(もちろんどうしようもなければシティでもそうするが)
そこで細かく繋ぐためにゴールキーパーにはフィールドプレーヤー並みに正確なショートパスの技術が要求されることになるのです。もちろんゴールキーパー自身にもプレスが掛かるのでそれを外すドリブル技術も時には要求されますね。
エデルソンはそのパス技術、及びボールタッチにおいて非常に高精度なプレーをすることができます。まるでバルセロナのディフェンダーか?と思うくらいテンポのいい「ロンド(ボール回し鬼ごっこ)」を披露しているシーンをよく見かけます。
事実2017年12月のトッテナム戦ではスパーズの司令塔であるエリクセンらを上回るゴールキーパーとしては考えられないパス成功数を記録しています。
昨シーズンは不安定でしたが、2017-2018シーズンにおけるマンチェスター・シティの試合運びの安定感は間違いなくこのエデルソンの加入が重要なウェイトを占めていると言えますね。両サイドバックもずいぶん高い位置を取れている試合が多いです。
ロングフィードの精度も抜群
さらにエデルソンは繋ぎのプレーだけでなく、ゴールキーパーにとって重要なロングフィードの技術にも長けています。マンチェスター・シティの前線にいるのはアグエロやザネ、ジェズスやスターリングといったアタッカー達です。
しかし彼らは決して高さを利とするプレースタイルではないので、彼らにボールをダイレクトで届けるにはそんなに競らなくてもボールを確保できる位置に正確なフィードを出す必要があります。エデルソンはそのキックも抜群に正確なのです。
アグエロのプレースタイルはこちらも参考に→アルゼンチン代表アグエロのプレースタイルは?ラインの駆け引きが抜群に上手いCF
ザネのプレースタイルはこちらも参考に→ドイツ代表サネのプレースタイルは?シティの若きスピード系万能アタッカー
しかもゴールキックはオフサイドにならないという利点があるので、ゴールキックが正確だと相手もある程度ラインを下げて対応せざるを得ず、結果シルバやデブライネというシティが誇る強力なミッドフィルダーのプレースペースができるのも美味しいです。
デブライネのプレースタイルはこちらも参考に→ベルギー代表デ・ブライネのプレースタイルは?現役トップクラスのチャンスメイカー
キーパー本来の仕事も高いクオリティ
さらにゴールキーパーの本分であり、古来から最重要な技術であるセービングの技術もエデルソンは超一流です。
まるでボールが手に吸い付いているかのようなセービングを見せますね。動体視力が良い上にシュート軌道を予測するセンスにも長けているのでミドルシュートだろうとPKだろうと安定してシュートをストップすることが可能です。試合の流れを変えるビッグセーブも多いですね。
プレーエリアも広く、ボックスの外まで飛び出して足やヘッドでディフェンス処理を行うこともあります。判断力にも優れていると言えるでしょう。もちろんキーパーがボックスを飛び出すプレーにはリスクもありますが、上述の通りエデルソンは足元のクオリティが高いですし周囲もエデルソンのプレースタイルは理解しているのでそれほど問題にはなっていません。
エデルソンはすでに先行発表されているロシアワールドカップブラジル代表の確定メンバー15人にこそ選ばれていませんが、最終的なメンバーにはほぼ確実に入ってくるでしょう。
ただしブラジル代表にはローマのアリソンがいますし、エデルソンのプレースタイルはある程度味方の理解とコンビネーションが必要なので練習時間の少ない代表でスタメン起用されるかどうかは不明です。
ともかくマンチェスター・シティの補強はこのエデルソンを引いたことによって大当たりだと言えるでしょう。まだ若いですし今後マヌエル・ノイアーらを抜いて世界一のゴールキーパーになる可能性もあるので引き続きエデルソン・モラレスには注目していきたいですね。
・ペップも唸るビルドアップのスキル
・フィードとセービングも超一流
・シティの安定感に大きな貢献