今やすっかりプロ野球シーズン末に定着した「クライマックスシリーズ」。
セ・パ各リーグの3位以内のチームが日本シリーズ出場権を賭けて激突する短期決戦に分類されるシリーズで、シーズン終了後にも白熱した試合が見られるため観客動員の数字もいいようですね。
しかし1位以外のチームが日本シリーズに進出してしまう事態も起こりうるわけで、一部の野球ファンからは「クライマックスシリーズって必要なの?」という声があるのも事実です。
そこで今回はクライマックスシリーズのルールを改めて整理、そして野球においてクライマックスシリーズを開催する事のメリットとデメリットを見ていきたいと思います。
クライマックスシリーズはどんなルール?
プロ野球クライマックスシリーズとは?
野球におけるクライマックスシリーズはペナントレース終了後、各リーグの上位3チームが日本シリーズ選手権への出場権をかけてトーナメント方式でぶつかるシリーズのことで、元々パ・リーグで行われていた「プレーオフ」という制度が好評だったことから2007年にセ・リーグにも導入され、セ・パ両リーグ共に「クライマックスシリーズ」と名前が付けられ現在に至ります。略して「CS」とも呼ばれますね。
2017年現在のルールとしてはまず3位と2位のチームがぶつかる3戦2勝制「1st(ファーストステージ)」とファーストステージ勝者とリーグ優勝チームがぶつかる6線4勝制「ファイナルステージ」に分けられています。
2017年のクライマックスシリーズは10月14日からファーストステージ、10月18日からファイナルステージが開催されます。
ちなみに日程が残っていても先に3勝(ファーストステージ)か4勝(ファイナルステージ)して勝ち抜けチームが決定した場合はその後の試合は行われません。
CS特有のルール「アドバンテージ」とは?
プロ野球クライマックスシリーズではリーグ戦上位チームに優位を与えるため「アドバンテージ」というルールが設定されています。
まずは開催スタジアムです。クライマックスシリーズの開催スタジアムは「上位球団のホーム球場」と定められています。つまりファーストステージでは2位球団のホーム、ファイナルステージではペナント優勝チームのホームで試合が開催されるという事です。ホーム開催は観客動員による利益も見込めますし何よりファンが後押ししてくれるので有利です。
そしてそれぞれファーストステージが3戦、ファイナルステージが6戦行うので状況によっては引き分けになってしまうこともあります。レギュラーシーズンと同じく同得点で12回終了で引き分けになり、再試合は行われません。したがって勝ち星が同数となる可能性が出て来ますが、引き分けにより勝ち星が同数となった場合これも上位球団が優先され、勝ち抜けとなります。
悪天候などで試合が中止になり、勝ち星に差が付かないまま予備日まで消化してしまった場合もペナントレースの順位が上位のチームの勝ち抜けとなります。
また最も大きいアドバンテージとしてはファイナルステージにおいてはリーグ優勝球団にあらかじめ「1勝」与えられた状態からスタートすることが挙げられるでしょう。言うまでもなく大きなアドバンテージです。
このようにプロ野球のクライマックスシリーズはリーグ戦の順位に応じて上位球団にアドバンテージが与えられることになっているのです。
予告先発は?
ペナントレースでは毎試合行われている「予告先発」ですが、クライマックスシリーズにおいてセ・リーグの球団は予告先発制度を使用していません(パ・リーグは使用)。
予告先発は翌日の先発投手をあらかじめ発表しておく制度のことで、事前に発表することで翌日の試合の戦略が変わってくるため野球の読み合いには重要な要素なのですが現状リーグ間での考え方が違うためか予告先発はパ・リーグのみの採用となっています。
・CSは基本的に上位球団があらゆる面で有利
・ファイナルステージでは優勝チームが1勝与えられた状態から始まる
・セリーグは予告先発を利用していない
野球クライマックスシリーズのメリットは?
消化試合が減る
上記のようなルールで開催されるクライマックスシリーズですが、冒頭で記載したように日本プロ野球でクライマックスシリーズを開催することにはメリット、デメリット、賛否両論色々あります。
まずはメリットから見ていきましょう。
日本プロ野球でクライマックスシリーズを開催することのメリットはまず「消化試合の削減」です。
クライマックスシリーズが開催されるまでの日本プロ野球は優勝が早めに決まってしまえばそれ以上頑張る意味がないので、若手を積極的に起用したり選手は来年の給与のため個人成績を上げる事に専念し始めていました。比較的チームとして勝つ意欲が薄くなるのです。つまり「消化試合」というわけですね。
しかしクライマックスシリーズがある事により3位以内でシーズンをフィニッシュできれば最後まで日本シリーズ進出の可能性が残されていることが多く、消化試合は激減します。
クライマックスシリーズのおかげで消化試合が減るのは確かなんですよね。クライマックスシリーズでも客が入るし。優勝チームが日本シリーズ行けないのは「?」ですが。
— magic-moment (@magicmoment_ibs) 2017年9月19日
これは観客側にしたらエキサイティングで嬉しいですよね。消化試合でネームバリューの薄い若手ばかり起用されても楽しいのはその球団のファンか余程の若手マニアくらいですからね。
球団の収入が増える
またクライマックスシリーズはNPBが主催する日本シリーズと違ってレギュラーシーズンと同じくホーム球団が主催します。
したがってリーグ2位のチーム、優勝チームはホームで開催できますからその分球場のグッズ売り上げや収入が増える事になり、大きな利益を得ることになります。(日本シリーズも一応利益の分配はあるけど)しかも日本シリーズ進出が掛かっていますからね。観客動員もほぼフルで球場が埋まります。
これもクライマックスシリーズ開催によるメリットと言えるでしょう。参考までに2013年に久しぶりにクライマックスシリーズ進出を逃した北海道日本ハムファイターズの本拠地札幌ドームは翌年の決算書で69.3%も純利益が減少したことを発表しています。(サッカー日本代表戦がなかったり日本ハムの不振だけが原因ではないが)
詳細はこちらを参考下さい→日本ハム球場移転④札幌ドームの収支は赤字化か?市民に負担は?
短期戦での強さを見せる事で真のチャンピオンに
またクライマックスシリーズは半年以上をかけて行われるペナントレース、リーグ戦とは趣が違い完全な「短期戦」となります。
リーグ戦はチーム力が高くないと制覇する事はできないのは当然ですが、短期戦では選手個人の調子の波、シーズン末の疲労、監督の戦術における柔軟性などリーグ戦とは別のチーム力を駆使しなければ勝てないシリーズです。
本当のチャンピオンを名乗るのであればペナントだけでなくこの短期戦もクリアしてこそ・・・という要素はあると思いますね。
・CSがあると消化試合が減る
・CSを開催できれば球団の利益も上がる
・短期戦を勝つことで真のチャンピオンに
野球クライマックスシリーズのデメリットは?
長いリーグ戦の価値は?
ここまでメリットを挙げてきましたが、クライマックスシリーズにはデメリットもあります。
やはりデメリットの最右翼は「リーグ戦の価値の低下」でしょう。
上で短期戦を制してこそ真の王者・・・と書きましたが、やはり現行のルールでは「長いリーグをやる意味あるの?」と思ってしまう事も事実です。なにしろ3位でも日本シリーズに進出できる可能性があるわけですからね。2010年に千葉ロッテマリーンズが3位から日本シリーズを制しています。
もっと言えば現在ではリーグ同士の対戦だけでなく、交流戦もあるため勝率5割以下でもシーズン3位内で日本シリーズに参加できる可能性もあります。実際に2009年ヤクルト、2013年広島カープ、2015年阪神タイガースは勝率5割以下にも関わらず3位でクライマックスシリーズに進出していますね。
さすがにシーズン勝率5割以下で日本シリーズ覇者と言われても・・・と考えてしまうのは仕方のない事でしょう。
メジャーリーグでもポストシーズンといってプレーオフが導入されていますが、メジャーリーグは合計30チームあるのでこういった制度はリーグの厚みを出すために一役買っているわけです。
しかし日本は12チームしかありません。結果は結果ではありますが現在のクライマックスシリーズのルールでは納得のいかない結果も出てしまうでしょうね。
・長いリーグ戦をやる価値が低下してしまうのがデメリット
・勝率5割以下でも日本シリーズに進めるのは問題あり
・メジャーはチーム数が多いから成立している
クライマックスシリーズの改善は可能か?
クライマックスシリーズ自体は悪いアイデアではないと思いますが、もう少しリーグ戦の価値を高める改善は必要でしょう。
例えばシーズンで10ゲーム差など圧倒的な差がついて優勝したチームにはアドバンテージを2勝に増やすとか15ゲーム差ついたら無条件で日本シリーズに進出とか・・・
クライマックスシリーズって今更ながら必要なんか?広島に失礼だと思います…首位と10ゲーム離れたらクライマックスは要らんやろ… #阪神タイガース #プロ野球
— ☆歌丸☆ (@teio3on) 2017年9月25日
また2位のチームで勝率5割以下ということはあまりないのでクライマックスシリーズをファーストステージに分けず2位と優勝チームだけで行うなどの改善は必要だと思います。
いずれにしても借金を作っているチームが日本シリーズ優勝と言われてもピンとこないですしもうちょっとリーグ戦の価値を高める必要はあるでしょうね。
2017年はセ・リーグが広島カープの優勝、パ・リーグが福岡ソフトバンクホークスの優勝が決まりクライマックスシリーズのファイナルステージに進出することが決まっています。
下剋上はあるんでしょうか?ぶっちぎりで優勝しましたしチーム力を考えればこの2チームで日本シリーズを行うのが妥当に見えますが結果はどうなるでしょうか。楽しみではありますね。
日本シリーズのルールについてはこちらも参考に→日本シリーズは延長や引き分けになった場合どうなる?今一度ルールをおさらい!
・短期戦という意味でCSはいいアイデアだが・・・
・アドバンテージを増やすなど改善は必要
・リーグ戦優勝の価値は今より高めるべき