過去何人もの選手が挑戦してきたスペイン・リーガエスパニョーラで日本人選手史上最も活躍していると言っても過言ではないベティスの乾貴士選手。
バルセロナ戦では驚愕の2ゴールを決めるなどレベルの高く、かつ文化も全く違うスペインで成功しているのは本当に凄い事です。
ハリルホジッチ体制下ではあまり代表に招集されていませんでしたが、2017年5月ワールドカップ最終予選イラク戦に挑む日本代表にやっと招集されました。
今回はそんな乾選手のプロフィールやプレースタイルを見ていきたいと思います。
乾貴士のプロフィールとスペインで成功した理由
乾貴士のプロフィール
名前ー乾貴士(いぬいたかし)
出身地ー滋賀県近江八幡市
生年月日ー1988年6月2日
身長ー170cm
体重ー65kg
ポジションーMF、FW
利き足ー右足
現在ではサッカー好きで知らない者はいないというくらいに活躍を見せている乾貴士選手ですが名前はすでに高校生の時から全国クラスでした。
滋賀県立の野洲高校2年生の時に出場した冬の選手権大会では田中雄大(コンサドーレ札幌)などと共に優勝。そのプロ顔負けの美しいサッカーから「セクシーフットボール」と呼ばれサッカーファンから注目を集めます。
早くから才能を見せていた乾選手は複数のクラブが獲得の動きを見せ、結局横浜Fマリノスに入団することになります。
乾選手に対してマリノスのイメージを持っている方は少ない事でしょう。それもそのはずマリノスではほとんど出場できずに入団から1年後、セレッソ大阪にレンタル移籍に出されてしまいます。
当時セレッソ大阪はJ2ディヴィジョンでしたが名将レヴィー・クルピや香川真司らと出会い、持ち前のドリブルやパスセンスを発揮してセレッソに完全移籍、ついに日本代表に招集されるまでに成長します。
2010年南アフリカワールドカップメンバーには選ばれませんでしたが、2011年ドイツ・ブンデスリーガ2部のボーフムに移籍し、これが初の海外挑戦となります。
ボーフムではチームトップとなる7得点を記録するなど活躍し、2012年には1部の古豪アイントラハト・フランクフルトに移籍、3シーズンを中心選手として過ごしました。
2015年には日本人の海外挑戦において「鬼門」とされるスペインリーグ・エイバルに移籍、当初は適応に苦しむもスペインサッカーの水が合っていたのかスタメンに定着、2017年最終節にはバルセロナから2ゴールを奪うなど海外組でもトップクラスの活躍をしています。
※2018年ベティスに移籍。
「鬼門」スペインで乾が成功できた理由は?
今までスペインリーグに大久保嘉人選手や中村俊輔選手、家長昭博選手など多数の日本人が挑戦していますがはっきり成功したと言える選手はこれまでゼロ。
ドイツではかなり活躍しているんですがスペインなど南ヨーロッパは北ヨーロッパと違って独特の文化を持っているため適応が難しいとされています。
しかし乾選手はスペインでスタメンを確保し、得点もアシストも挙げている日本人で初めてとなるスペインでの成功者と言ってもいい活躍をしています。
この成功には乾選手特有の明るさが秘訣となっていると思いますね。
スペイン語はまだ完璧ではないそうですがチームメイトと積極的にコミュニケーションを取るなどスペインの輪に溶け込んでいます。
とっても仲良さそう。
この記事「スペインリーグで活躍する日本人が少ない理由はやはり言葉の問題」でも書いていますが、ドイツ人やイングランド人と違い南欧の人たちはチームに馴染む気のない選手にはパスすら出さない、という事も珍しくないですからね。
抜群のテクニックを持つ中村俊輔選手がエスパニョールで全くダメだったのもこの辺が関係していると思われます。
乾選手はJリーグ時代もそうですし今でもそうですが試合中など露骨に感情を表に出すことがあります。そういった性格は日本では疎まれがちでしたが自己主張が何より大事なスペインという土地では長所になっているのです。
ちなみに所属のエイバルは乾選手を使ってアジア市場の拡大を狙っているようで・・・シーズン中にも関わらず首相とスペイン国王との晩さん会に「チームに残りたい」と主張する乾選手を無理やり日本に派遣したりしています。
ちょっと強引すぎるエイバルのやり方についてはこちらも参考に→乾貴士がスペイン国王の食事会のため帰国。アジア市場を狙うエイバル
乾貴士のプレースタイルは?代表に呼ばれなかった理由も
単なるドリブラーではない乾
乾選手は日本では比較的少ないトリッキーなドリブルから決定的な仕事をするタイプの選手です。
メインポジションは左のウイング。左サイド前方でボールを受けて仕掛けていくシーンは乾選手のプレーとしてお馴染みですよね。
しかし乾選手自身は「自分はドリブラーではない」と語っており、どちらかというと周りを活かすタイプの選手であると言っています。
確かにドリブルはかなり上手いですし、緩急の使い方が天才的に上手く、抜け出して左サイドからカットイン。そしてエリアギリギリの所からシュート・・・というのは乾選手の強力な武器の一つ。ハイライトでクローズアップされやすいのもこういったプレーです。
しかし乾選手のプレーを1試合通して見てみるとドリブルのみで突っかけていくシーンはイメージほど多くなく、ボールを持った時は周囲の選手とコンビネーションを駆使して攻めていくような場面の方が多いです。
一番分かりやすく代表的なのは近いポジションに元セレッソの同僚香川真司選手がいる時でしょうか。
香川選手がいる時はイニエスタとメッシか?というくらいお互いにボールを当て合い、スペースを作って抜け出す抜群のコンビネーションを見せます。
スペースを作る動きも上手いですし、何が何でもどんな状況でも自分で切り込むという単調なドリブラーではありません。
またファーストタッチが柔らかくて置き所も上手く、そこにもセンスを感じますね。
こちらはバルセロナ戦の2ゴール。
裏に抜け出す動きも抜群です。
総じてテクニックの優れたウインガーと言えるでしょう。
日本代表にしばらく呼ばれなかった理由は?
これだけテクニックのある乾選手ですがしばらくハリルホジッチの日本代表には招集されていませんでした。
2017年5月にやっと選出されましたがこれはなんと約2年2か月振りの選出となります。
スペインリーグでスタメンを張っているのになぜ呼ばれなかったのか・・・
原因は乾選手の「守備面での不安、インテンシティの不足」「ムラの大きさ」といった所が原因かなと考えます。
乾選手が主戦場とする左サイドで起用されているのはヘルタ・ベルリンの原口元気選手やマインツの武藤嘉紀選手などでした。
どちらも守備で走り回るのが得意でフィジカルコンタクト時のインテンシティの高い選手です。
ハリルホジッチは戦術的にサイドの選手にこういった守備での頑強さを求める傾向にあるのでその部分では劣る乾選手は招集されていなかったのでしょう。
また調子のいい時は天才的なプレーとアイデアを見せる乾選手ですが調子が悪い時はボールロストとシュートミスが著しく増えるのでそういったムラの大きさもハリルは嫌っていたかもしれません。
しかし乾選手は元々スタミナお化けとして有名な選手です。エイバルで安定的に試合に出るようになってからは守備のインテンシティも増してガツンを体をぶつけてボールを奪う、ハリルの言う「デュエル」も頻繁に行うようになりましたので、今の乾選手ならやれるだろうと判断して招集したのだと思います。
スタメンかどうかは分かりませんが乾選手のトリッキーなドリブルとコンビネーションは攻撃のジョーカーとして強力ですから出場を楽しみにしています。
※2018年6月追記 ロシアワールドカップでも得点、レアル・ベティスに移籍が決定しています。