近年スポーツ界でもその名をよく聞くようになった「イップス」。
ゴルフ選手や野球選手にとんでもないミスプレーが連続すると「あいつイップスなんじゃないのか?」と簡単に言われるようになりましたね。また、スポーツ漫画などでも取り上げられることが増えてきたので知っている方もいらっしゃるかと思います。
ではそのイップスとはどういう症状、状態のことを指すのでしょうか?イップスになってしまった場合の対処法とは?見ていきましょう。
イップスとは?調子の波とは違う心の病気の一種
イップスの症状
イップスとは心因性の病気の事でいつも行っている動作が突然できなくなってしまう症状のことを指します。
特にゴルフや野球、弓道など「同じ動作を正確性を持って行う」行為を繰り返すスポーツ選手に多い症状です。
ゴルフだとドライバーショットやパターがあらぬ方向に行ってしまったり、野球だと、投球のコントロール欠如や悪送球などが症状として知られています。
何もこれらは難しい場面で起こるわけではなく、プロの選手であれば当たり前に出来るような状況で起こってしまうのです。傍から見ていると「ふざけている」かのようなミスに見えるので理解されない事もありますね。
しかしこれらは練習不足やメンタルの弱さ、コンディションの好不調の波だけが原因ではなく、れっきとした精神的な病気の一種なのです。
イップスの原因
イップスの原因は現在多数挙げられていますが、一番影響が大きいのは心的外傷、トラウマと呼ばれる脳に残る過去の悪い記憶です。
スポーツで言えばやはり「ミス」が挙げられるでしょう。特に大事な場面でミスしてしまった時なんかはその記憶が心と脳に刻まれ、次に同じような場面が来た時に筋肉が緊張して思うように動かなくなってしまうのです。
そしてそれらの症状は練習不足が原因どころか、アスリートや楽器演奏者など「同じ動作を繰り返し練習してきた人間」に起こりやすいとも言われています。
幼い頃から同じ動作を繰り返し練習してきた人は「何かいつもと違う」感覚を察知するのが速いですし敏感ですよね。なのでその微妙な差異が感覚を狂わせ、元に戻らなくなってしまいます。
このイップスを発症するとそのまま引退に追い込まれてしまうケースがあり・・・スポーツ選手にとっては重要な症状となっているのです。
イップスの例
こちらはメジャーリーグ。何気ない敬遠の球ですが・・・
野球あるある?イップス? https://t.co/F2wBNNIpQ7
— 野球の珍プレー・好プレー特集! (@lyjorazaryr) 2016年12月31日
こちらは中日ドラゴンズの桂捕手の送球イップス(現在は克服)。
スポーツの中でも野球にイップスは付き物ですが、これがガチな送球イップスです。ちなみに動画は2軍ですがプロ野球です pic.twitter.com/8TuKg1gsox
— しゅろん大佐 (@shuron_) 2015年12月29日
ピッチャーに返す球が明らかにおかしいですよね。
これは元NBA選手でゴルフが趣味のチャールズ・バークレーのスイング。
イップスのひどいヴァージョン — Charles Barkley’s Golf Swing http://t.co/gZXrPmRF via @youtube
— しゅんたな (@hemppies) 2011年10月11日
彼のゴルフはあくまで趣味であり、この「イップス」スイングはギャラリーにも毎回好評でみんな笑っています。
しかしバークレー自身は本当に大真面目にこのスイングをしているのです。素振りのときは何でもないそうなのですが・・・実際に「打つ」と意識すると筋肉が硬直してしまうんですね。
イップスの治療法や対策は?克服はできる?
1、自分のプレーを客観的にゆっくり確認してみる
イップスを発症した選手は、そのプレーフォームがおかしくなっていることが多いです。本人は「いつもと同じように」やっていても体が上手く動いていないということですね。
対処法としてはビデオに自分のプレーを撮ってコーチや周囲の人と一緒にフォームの乱れを確認し、「ゆっくり」見直してみることが重要でしょう。
2、ルーティンを意識してみる
ラグビー日本代表の五郎丸歩選手がペナルティゴールを蹴る前に手を合わせて拝むようなポーズを取るのが有名になりましたよね。
あれは「ルーティン」といって集中する際に「いつもと同じ動作」を意識的に行うことで精神に落ち着きを与え、そのプレーの成功イメージを呼び覚ましやすくする行動です。
野球のイチロー選手もバッターボックスに入る前に必ずお馴染みのポーズを取りますし、海外のサッカー選手がPKを蹴る前に神に祈っている場面を見かけますよね?もちろん宗教的な意味合いもありますが、あれも広義的にはルーティンの一種と言えるでしょう。
成功イメージを持つことを習慣化させる事ができればイップスの克服に役立つと考えます。
3、ポジションを変えてみる
元メジャーリーガーの田口壮さんもイップスを患ってた選手の一人です。
プロ入り直後は内野手を務めていた田口さんですが、なんでもない送球を大暴投にしてしまったりなど徐々にイップスの症状が現れ始めたそうです。
克服するために本人、周囲が取った対策は「外野手へのコンバート」。
元々肩が強かった田口さんは外野手として長い距離のスローイングを続けることで投げ方を思い出し、そのうちまた短い距離のコントロールも戻りました。
「同じ動作を繰り返す」ことがイップスの原因の一つとも言われているので、イップスになった場合思い切ってポジションを変えたりプレーの種類、使う筋肉を変えてみるといいと思います。
4、周囲の理解、協力は必須!
前述の通りイップスの症状が出るとなんでもないようなプレーをミスしてしまいます。第三者から見ると「ふざけている」と思われるほどです。プロ選手であれば心無い批判を受けることもあるでしょう。
そしてそういう選手はプレーで取り返そうと思えば思うほどドツボにハマっていきます。
ですからイップスが疑われる人には周囲が状況を理解し、治療に協力してあげることが必須だと言えますね。
上にあるバークレーのゴルフスイングも、みんな笑ってはいますが「失敗してもいいんだよ」という空気を作ってあげるのはイップスの克服に大切なことでもあります。