北海道日本ハムファイターズの球場移転に関わる件で、日ハム側が「天然芝」、「開閉式」のドーム球場を希望していることが明らかになりました。
日本にも色々なスタジアムがありますが「天然芝」かつ「開閉式」のドームは一つもありません。
果たしてこの2つを両立したスタジアムを建設することは可能なのでしょうか?
「天然芝」「開閉式」ドームのメリットとデメリット
「天然芝」である必要性とメリットは?
日本ハムが現在使用している札幌ドームは「人工芝」の球場です。(サッカーの時は天然芝)。
この人工芝はその名の通りナイロンやポリエチレンを使った「芝のような物質」であるため、摩擦が多く、コンクリートの上などに設置されるので選手の身体に負担が掛かりやすく、一般的に「怪我のリスク」が高まるとされています。
画像引用元:札幌ドーム公式
これは札幌ドームの人工芝を巻き取っている様子。正直ペラペラで怖い・・・
選手への負担を考えてメジャーでは天然芝、もしくは人工芝と天然芝のハイブリット芝が主流になってきていますね。
日本でも甲子園球場や広島のマツダスタジアムなど天然芝球場が増えています。
日本ハムも新球場を建設するにあたって選手への負担が少ない天然芝の導入を決めたわけですね。
・人工芝は選手への負担が大きい
・札幌ドームは野球使用時に天然芝は使用できない
天然芝のデメリットは?
天然芝球場のデメリットとしては年間の「維持費が高い」ことが挙げられます。
天然芝は当然生き物なのでハゲやすいですし、定期的に日光に当てて育てなければいけませんので張り替えが容易な人工芝に比べて維持費がとても高いです。また日本の気候だとアメリカに比べて他の植物が育ちやすいため、芝は競合で負けてしまうこともあるそうですね。
さらに北海道だと本州に比べて芝が育ちにくいという点もデメリットとして挙げられるでしょう。札幌には札幌競馬場があり、夏には奇麗な芝生が広がりますが年間を通しての寒冷な気候により維持は難しく、札幌開催は7月、8月、9月初旬の夏のみになっています。
芝の種類も違い、本州でメインの芝として使われている「野芝」は道央以北の北海道では自生していません。そのため洋芝と「オーバーシード(複数種類の芝を同時に育てる)」の導入など工夫がいるでしょう。
・天然芝のデメリットは維持費が高いこと
・北海道は寒いので特殊な芝育成をしなければいけない
天井を開閉式にする必要は?
北海道は寒いので年間を通して野球をやるなら野外球場は不可能。天井付きのドーム球場である必要があります。さらに一面天然芝を使用するのであればその屋根が開閉式である必要があります。
芝生に日光を当てて育てなければいけないからですね。
ちなみに札幌ドームはサッカーでの利用の際、天然芝を使用していますがこれは芝生を空気圧で浮かし、ピッチごと外に運び出して芝生を養生するという「ホバリングシステム」が採用されています。
この「ホバリングシステム」は見た目通りめちゃくちゃ維持費が高いです。
札幌ドームは元々2002年日韓W杯のために作られたドームなので当時は資金が豊富に使えたのでしょうが・・・このホバリングシステムの維持費が日本ハムの経営を圧迫していることは否めないでしょう。
札幌ドームの資金問題に関してはこちらもご参考ください→日本ハム球場移転①札幌ドームの問題点は?
もちろんドームの天井を開閉式にするのにも大きなお金は掛かりますが、ホバリングシステムよりはマシという判断もあって日本ハムは天然芝のために開閉式のドーム球場を計画していると思われます。
・北海道は寒いので屋根は必須
・天然芝なら芝の養生のため屋根を開閉式にする必要ある
ドーム天井を開閉式にするデメリット
開閉式にするデメリットとしては「建設費が高い」、「広い敷地が必要」という2点が挙げられるでしょう。
日本プロ野球球団所有で唯一開閉式のドームである福岡ヤフオクドーム(人工芝)は建設費に760億円という巨額の資金が投入されています。札幌ドームは422億円なので・・・開閉式かつ天然芝球場を建設すればどエライ金額になってしまう可能性があります。
そして開閉式にするには屋根を収容するスペースを作ったりする必要があるので広い敷地面積が必要になります。さらに日本ハムは「ボールパーク構想」というスタジアム敷地内にホテルやショッピングモールを建設する計画を考えているので広い敷地は必須。
札幌市が提案している北大案と八紘学園案では明らかに敷地が足りないような・・・
追記 北広島に正式決定、北広島の運動公園ならスペースは十分ですね。
・開閉式ドーム球場は建設費が高い!
・広い敷地も必要
アメリカの「天然芝」「開閉式」のドーム
日本プロ野球界には一つもない天然芝開閉式のドーム球場ですが、アメリカではそこそこポピュラーな様式です。
日本ハムが計画の参考にしている(たぶん)アメリカのドーム球場を見ていきましょう。
チェイスフィールド
こちらはアリゾナにあるダイヤモンドバックスの本拠地「チェイスフィールド」。天然芝で開閉式の屋根を採用している野球場としては世界一の規模を誇ります。
#OpeningDay #GoDbacks #baseballseasonishere #BaseballIsBack #ChaseField #arizonadiamondbacks pic.twitter.com/QT1ZhbFKqT
— Z Livingston (@ZLivingston76) 2017年4月3日
屋根が閉まっている時は体育館のような無骨さですが、屋根が開けば一転アリゾナの晴天が拝めます。アリゾナは雨がほとんど降らないため、雨天対策ではなく日差しの対策で採用されています。
また年中日差しが強いので天井を開けておけば芝の育成も簡単です。
セーフコフィールド
Here’s a fun little time lapse of the @SafecoField roof opening up from earlier this morning! #KOMOnews pic.twitter.com/tABo3Tz0sO
— Jordan Treece (@JTreece406) 2017年4月10日
こちらはシアトル・マリナーズの本拠地、セーフコ・フィールドです。天然芝、開閉式球場としては世界2位。
屋根は右翼スタンドに収容されていて、およそ20分掛けて開閉されます。
ミラーパーク
🎶 Since we don’t have any snow….Let us mow, let us mow, let us mow….🎶 #Brewers #MillerPark pic.twitter.com/atNFBxVKNh
— Milwaukee Brewers (@Brewers) 2015年12月16日
札幌と緯度が近いウィスコンシン州、ミルウォーキーにあるブルワーズの本拠地ミラー・パーク。
札幌と同じく雪が降りやすい気候で、日本ハムとしては参考になるでしょう。
開閉式で天然芝球場は可能か?雪の問題も
開閉式で天然芝の球場は可能か不可能かで言うと可能だとは思います。
しかし北海道特有の気候による芝の養生問題と建設費用の問題はクリアせねばなりません。
上記したミルウォーキーのミラー・パークでもやれてるんだから北海道でもやれるんじゃないかとは思いますが・・・日本とアメリカでは芝の種類や強さが違うのでそのまま単純に北海道でもやれるとは言えないと思います。
そして同程度の緯度とはいえミルウォーキーの年間降雪量は120cm程度、対して札幌市は年間500cm以上も降雪がある都市部としては世界有数の豪雪地帯ですので同じようにはやはり考えられないでしょう。
芝の養生のためとはいえ札幌で冬の間天井を開けっ放しにしておくのは難しいような・・・
様々な工夫をしなければいけないのでアメリカのスタジアムより建設費、維持費共に掛かりそうです。最低でも500億円はいるんじゃないですかね。日本ハムと北広島市(もしくは札幌市)だけではまかなえない金額だと思うので、Jリーグガンバ大阪の吹田スタジアムのように建設資金を募金や寄付で募るなどの選択肢もありますね。
ただいずれにしてもこれだけ雪と人の多い寒冷都市で「開閉式」「天然芝」のスタジアムが造られるとなればかなり画期的な事例になると思うので期待はしたいですね。
※2018年11月追記 新球場概要が発表され、本当に天然芝・開閉式のスタジアムにするそうです。日本初のスタジアムですね。
・石狩地方は都市部として世界有数の豪雪地帯
・芝の養生、豪雪対策に工夫が必要
・開閉式天然芝でやるなら資金集めが大変