野球中継を見ていると時折「エンタイトルツーベース」という言葉が聞こえてくる時があります。
そのおかげで走者が進塁したり得点が記録されることがありますよね。
WBCやメジャーリーグの放送が普及してきて今では完全に日本の野球文化にも根付いています。
ではその「エンタイトル」とはどういった制度なのでしょうか?状況の例と共に見ていきましょう。
野球におけるエンタイトルとは?「安全進塁権」の一つ
安全進塁権とは
野球には選手がプレーしなくてもランナーが自動的に進塁できる「安全進塁権」というルールがあります。
投手がボークを犯したときや、打者に四球を与えた時は塁が一つ進められますよね?こういった審判に宣告されると自動的に進塁できるのが「安全進塁権」です。
打球が一度も地面に落ちないままスタンドに入る「ホームラン」もこの安全進塁権の一つです。フェアゾーン内でスタンドに直接入ったら自動的に打者は4つ塁を進めることができます。
エンタイトルも「安全進塁権」の一つ!
野球実況などでよく聞かれる「エンタイトルツーベース」もこの安全進塁権の一つで、打球がフェアゾーンで一度バウンドして観客席に入った場合や、野手の送球がベンチや観客席に入ってしまった時もエンタイトルツーベースが宣告されて、打者と走者が2つ塁を進めます。
観客席に入ってしまったらプレーは続けられないのでそうなった場合のルールというこ事です。打球がスコアボードや審判のマスクになど用具に挟まってしまった時も適用されますね。
「エンタイトル」は英語で「entitle」の意で、日本語にすると「資格を与えられる」という意味です。選手がそのプレーで勝ち取ったスコアではなく、審判によって「与えられる」権利ということですね。
ちなみにアメリカメジャーリーグでは「エンタイトル」とは言わずに「ground rule double」と言います。
エンタイトルの例は?球場によってルールが違うことも?
エンタイトルは球場によってルールがある?
ルールの大元メジャーで「ground rule double(グラウンド・ルール・ダブル)」と言うだけあってエンタイトルツーベースは球場(グラウンド)の形によってローカルルールが定められていることもあります。
例えばシカゴ・カブスの本拠地リグレー・フィールドの外野フェンスの一角にはツタが生い茂っている部分がありますが、このツタに絡まってボールが出て来なかった場合もエンタイトルツーベースが与えられます。
ドームの天井に当てたらホームランではなくツーベース?
またドーム球場の場合、打球が天井に当たるとエンタイトルが宣告されることもありますね。
2016年にソフトバンクの柳田悠岐選手が札幌ドームの天井に当ててツーベースになりましたし、2017年侍ジャパンの大谷翔平選手もドームの天井に当ててツーベースを宣告されています。古くは松井秀喜元選手の打球が東京ドームの天井に挟まって出て来なくなったこともありましたね。明らかにホームランの当たりでしたが残念ながらこれもツーベースの判定になってしまいました。
内川聖一が審判に当ててエンタイトルツーベース
福岡ソフトバンクホークスの内川聖一選手の打った打球が審判に当たって観客席に飛び込み、エンタイトルツーベースが与えられこともあります。
打球が投手の位置を超えたら審判は「石ころ」と同じ扱いになるためですね。
WBCキューバ戦で山田哲人の打球がツーベースになったのは?
2017年のWBCで山田哲人選手のスタンドに飛び込もうかという打球がとある少年によってフェンス手前でキャッチされ、ビデオ判定の末2塁打になったことは記憶に新しい方も多いと思います。
あれもフェアグラウンドに飛んだボールが観客席に「関わった」と判断されたエンタイトルツーベースの一種と言えます。
この件はビデオ判定の結果山田選手の打球は少年がキャッチしなくてもスタンドインしていなかったと判定されたためツーベースになっています。確かにこの打球がホームランになったかどうかは微妙ですね。
同じWBC2017でドミニカ対プエルトリコでも観客がフェンス手前で打球をキャッチした、という件がありましたがこちらはビデオ判定の結果ホームランと認められています。
They say catching one ball at a game is rare … but TWO? #WBC2017 pic.twitter.com/lROwZ63I5B
— WBC Baseball (@WBCBaseball) 2017年3月15日
しかしホームランではあろうとなかろうとフェンスの当たり方によってはスリーベースになる可能性もあるので手を伸ばしてインプレーの打球に触る行為は控えるべきでしょう。
ちなみにフェアゾーンに飛んだ打球が選手のグラブや体に当たってスタンドインした場合はホームランが認められます。