野球におけるストレートのノビとキレとは?大谷のストレートはノビないが・・・

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野球中継を見ていたり、野球ゲームをやっていたりするとよく見かける表現「球のノビ、キレ」といったフレーズ。

実際投手の投げる球にノビとかキレとかといった要素は存在するのでしょうか?また存在するとしたら何が違うのか?

そして2016年北海道日本ハムファイターズの大谷翔平投選手が日本最高速度となる球速165kmを記録して話題になりましたが、ホークスの選手たちにかなりバットを当てられていましたよね。

165kmが出ていれば通常バットには当たらないような気がしますが・・・大谷選手のストレートは質が低いということなのでしょうか?

今回は投手の球質における「ノビ」と「キレ」、「マグヌス効果」や回転数などについて少し考察してみたいと思います。

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球の「ノビ」と「キレ」について

「ノビ」のあるストレートとは

投手が投げる球の「ノビ」は主にフォーシームと呼ばれるストレートの球質に関して使われる表現になります。

ストレートはリリースの際にバックスピンを掛けてボール周りの空気を巻き込みながら投げる球で、投手が投げる球として最も球速が出やすいですね。

このストレートの質に関して、単に球速が速い球=ノビがある球とはなりません。

「ノビ」に関して重要なのはボールにかかる回転数の多さ。

ボールに掛かる回転数の数は多ければ多いほど後述する「マグヌス効果」によって球が「揚力」を得て打者手前でホップするように「ノビ」るストレートになります。

「キレ」は?

ノビとキレの違いについては人によって意見が分かれることもあり、定義も明確に定まっているわけではないので難しいですが・・・個人的に「キレ」は打者の直前で鋭く変化する「変化球」について使われるべき言葉だと考えます。

今回の記事ではストレートをメインに扱うので「キレ」は一旦置いて置くことにします。

POINT

・「ノビ」は回転数が多く、マグヌス効果によって浮き上がるようなストレートの分類の一つ

・定義は決まってないけど「キレ」は変化球を表現するイメージ

ストレートの「ノビ」を生むマグヌス効果とは?

マグヌス効果は球状の物質や円柱状の物質が回転する事によって付近の空気の流れを巻き込み、垂直方向に力を生む力学のこと。

野球のストレートで言えばバックスピンによって下側の空気が巻き取られ、上側にその分の力が流れ込み、揚力を得る・・・という仕組みになっています。

言葉では分かりにくいので外国の方がバスケットボールでマグヌス効果を検証した動画をご紹介します。

最初の実験ではボールに回転を掛けず、そのままボールを高所から落としています。結果は風と重力によってふわふわとその場に落下していますね。

ちょうど野球で言うとナックルボールみたいな感じ。(ナックルは回転掛けずに投げる)

次の実験ではバックスピンを掛け、落下させます。すると・・・

ボールの進行方向に向かって「垂直の力」が働き、落とした方向から見て明らかに上にボールが浮いていくのが分かります。

英語ですが空気の流れも説明されていますね。

これがマグヌス効果で、バックスピン数の多いストレートが沈まずにミットに収まる仕組みです。重力にある程度逆らうような形で進んでいくのでストレート(フォーシーム)が真の変化球だという人もいますね。

フォーシームやツーシームなどストレートの種類の違いについてはこちらも参考に→日本人打者が苦戦するアメリカのツーシーム。ボールの違いが大きい?

もちろん上記の実験は野球ボールよりはるかに大きいバスケットボールなのでかなり大げさに動いていますが、球状の物質であれば基本的にこの効果の影響を受けます。

POINT

・「ノビ」を生むのは「マグヌス効果」

・ストレートのようにバックスピンが掛かった球体は進行方向に向かって垂直の力を得る

・逆に「落とす」ならナックルのように回転を掛けずに投げる

それでは実際に普通のストレートと回転数が多いストレートの違いを見ていきましょう。

ストレートの比較!ストレートは球速だけでは分からない

大谷翔平のストレートと則本昂大のストレート

まずは2016年クライマックスシリーズで日本最速記録165kmを更新した大谷翔平のストレートがこちら。

確かに速い。滅茶苦茶速いです。

しかしこの試合で対戦したソフトバンクの選手たちは前に飛ばないまでも大谷選手のストレートをバットに当てまくっていました。野村克也氏も言っていましたが、通常165kmのストレートにバットを当てるのは簡単ではないはず。

ましてや大谷選手は「キレ」のいいスライダーやフォーク、チェンジアップ、カーブなど多彩な変化球を持っているので狙い球をストレートに絞るのも難しいはずですが・・・

対してこちらはパ・リーグ奪三振王で楽天イーグルス所属則本昂大選手の投球。動画の中でいくつかストレートを投げています。

則本選手のストレートは平均球速152kmくらいですが、回転数が2000回転を超え、ベース到達時点でもほとんど減速せずに進み打者からすると浮き上がってくるような(実際には浮き上がってはいないけど)軌道でキャッチャーミットに収まっています。動画でも打者の多くがストレートの下を振らされていますね。

則本のストレートはノビる。大谷のストレートはノビない

マグヌス効果を受けた則本選手のストレートがいわゆる「ノビ」るタイプのストレートです。大谷選手のストレートは重いですが「ノビ」はあまりないタイプですね。

野球漫画などでよくある表現「ストレートがホップする」という現象は現実には起こりませんが、打者目線だとこのような回転数の多いストレートは沈まずに打者に向かって「ノビ」てくるように見えることからそういった描写がされているのだと思います。

ストレートがノビると打者はボールの下を振らされることが多く、結果的に空振りを取りやすい球質になっていると言えますね。

野球のスピードガンはあくまでリリースした時点での「初速」を計測するものなので、回転数や打者に向かって伸びるようなストレートの凄さは反映されません。数字だけじゃなく「見た目速い」という要素はストレートという球にとっては非常に大きいものなのです。

紹介した則本選手や楽天の岸孝之選手、阪神藤川球児選手のストレートなど球速表示がそこまで速いわけではなくても(この選手達も十分速いけどあくまで165kmと比べて)回転数の多さによって生まれる「ノビ」によって空振りを取れる選手もたくさんいるので球速だけでなくそういったポイントにもよりスポットが当たって欲しいなと思います。

「ノビ」の有無は種類の違いで効率はまた別

ただ「ノビ」の有るなしはあくまで質の高い低いではなくストレートの種類の違いというだけで、先に紹介した大谷選手のストレートの質が低いという事ではありません。大谷選手のストレートは単純に「ノビ」るタイプのストレートではないというだけで重さもありますしそう簡単に打てる球ではないです。

実際に165kmを出したホークス戦でもホークスの選手はバットに当てこそすれ前にはほとんど飛びませんでした。当たっても前に飛ばなければゴロになりやすく、またファウルになって他の変化球などで三振を取りやすくなるなどこのタイプのストレートもメリットはあります。

ましてや大谷は上記の通りキレのいいスライダー、カーブ、フォーク(スプリット)なども持っていますからね。変化球で三振を奪う事は十分に可能です。

ノビのあるストレートの軌道は確かに美しいですが「相手をアウトに取る効率」とはまた別問題です。あくまで種類の違い。

いずれにしてもストレートの威力は単純な球速表示だけでは測れないという事ですね。またリリースポイントや、チェンジアップなど他の球種との兼ね合いで実際よりストレートが速く見える事もあるのでストレートはやはり球速だけでは語れないと言えるでしょう。

POINT

・ストレートに「ノビ」があると空振りが取りやすい

・ただノビの有無はあくまで種類の違いというだけ

・大谷ストレートは「ノビ」ないが前にも打てない質の高い球

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コメント

  1. 翔平 より:

    コメント失礼します
    大谷投手の場合は球速があり過ぎてバッターが球のノビを感じる前にキャッチャーのミットまたはホームベースまで到達してしまいます。
    だいたい145~150kmくらいが一番ノビを感じやすい球速らしいです。
    後165km出しても当てられるのは多分大谷投手のフォームが関係しているのではないかと思います。
    大谷投手のフォームはスリークォーター気味のフォームで球の出所が分かりやすく球速が出ていても球の出所が見えにくい投手と比べると見極める時間はだいたい同じくらいかと思われます。
    則本選手はまるで頭の後ろからいきなり出るようなフォームなのでタイミングもとりづらく球速もノビを感じる速さなので打たれにくいのかと思います。
    間違っていたらすいません

  2. . より:

    ボールが重力で落下する距離はy=1/2gt^2で求められます。プレートからホームベースの距離18.44mとして計算すると、150km/hでは0.44秒の間に96cm落ちますが、165km/hでは0.40秒ですから79cmしか落ちません。これは球速によってボール2つ分上にノビていると言えるでしょう。

    実際、NPB時代にも大谷のストレートは則本選手よりも多く空振りを取っていました。2018年4月10日現在、大谷は2試合に先発して2勝していますが、やはりストライクゾーンの直球で空振りを取ってる数はメジャーで2番目。振った回数に対して空振りを取れている率でもメジャー3番目で、いずれも昨年サイヤング&奪三振賞を取ったマックス・シャーザーよりも上の数字です。