2017年5月31日、北海道日本ハムファイターズの斎藤佑樹投手が2015年9月以来623日振りの勝利を挙げました。
早稲田実業の選手として挑んだ甲子園では田中将大選手と引き分け再試合にもつれるほどの投手戦を見せ「ハンカチ王子」として一世を風靡した斎藤選手ですが・・・プロ野球では期待されたほど活躍できず、批判の的になる事も多かったですね。
今回はそんな斎藤佑樹選手の現在と1軍で勝ち星を挙げられるまでに持ち直した理由を見ていきたいと思います。
斎藤佑樹がプロで伸び悩んだ理由はケガ?
甲子園で一世を風靡
斎藤佑樹選手は2006年早稲田実業3年生の夏に甲子園で歴史上に残る熱投を繰り広げ話題になりました。
現在でも甲子園1大会における最多投球回数である69回を投げぬき、あの板東英二さんに次ぐ史上第二位となる78個の三振を奪い、ストレートの球速は試合の後半にも関わらず148kmに達するなど同年代かつ決勝で戦った田中将大投手(ニューヨーク・ヤンキース)とあの時点では互角の投球をしていました。
その端整な顔立ちと投球の合間にハンカチで汗を拭うことから「ハンカチ王子」とも呼ばれ一般メディアでも多く取り上げられてちょっとしたブームを引き起こしていましたね。
ただ斎藤佑樹はすぐにはプロ野球に入らず、大学に進学して一度鍛えてからプロを目指す事を決断します。
早稲田大学1年目は甲子園優勝投手の勢いそのままに大学リーグ優勝に貢献、1年生投手では初となるベストナインも受賞しています。
股関節負傷を負ってしまった大学2年時
そのまま順調に育つだろうと思っていましたが・・・
斎藤佑樹は早稲田大学2年生の時、現在にまで尾を引いている「股関節の負傷」を負ってしまいます。
元々先発投手の中では体格が小さめの選手。
高校時代は球威と球速を出すために膝を大きく曲げて上体を沈ませ、腕を上から豪快に振ることで三振をガンガン取るスタイルの投手でしたね。
しかしこのフォームは下半身への負担が大きく、また斎藤佑樹自身それまで走り込みなど下半身強化をあまりやってこなかったそうです。これらの要因が重なって股関節を負傷してしまったわけです。
股関節負傷→肩負傷の悪循環
そこで斎藤佑樹選手はやっと大学3年時に肉体改造やフォームの改造に着手します。
この時の斎藤佑樹のフォームは以前の股関節に負担の大きい膝を折り曲げるスタイルから左足を立たせて上半身で投げるようなフォームになっていました。
このフォームの変更で投球スタイルは迷走。さらになぜか「150kmを出す」という球速へのこだわりに執着し、完全にフォームを見失って3、4年生時には成績が徐々に下降していきました。(一応150kmは出た)
ただ成績は落ちたといってもそこは甲子園優勝投手、大学では東京六大学野球史上6人目となる通算30勝300奪三振を記録するなどプロ野球からドラフト上位指名されるには十分すぎる成績を残していたのです。
結果北海道日本ハムファイターズが1位で指名。ドラ1で1勝も出来ずに引退していく選手が多い中デビュー年に6勝、翌年には5勝を挙げるなどまあまあ及第点と言える投球はしていましたね。
しかし・・・2年目、2012年のシーズン末に「肩関節唇損傷」という大ケガを負ってしまいます。肩関節唇損傷は「野球肩」と呼ばれるケガの一つで、元ホークスの斉藤和巳選手を引退にまで追いやった非常に厄介なケガ。
甲子園最速155kmをマークしているヤクルト由規選手もこのケガでしばらく1軍では投げられない状態でしたね。由規の記事はこちらも→ヤクルト由規の凄さは球速とスライダー!完全復帰なら異例の大ケガも
2013年から2016年でわずか3勝にとどまる
斎藤佑樹が大学時代に負った股関節の負傷を庇うために「立ち投げ」のようなフォームに変更したのは上に書いた通りです。
巨人の杉内俊哉選手がそうであるように股関節の負傷は投手の球質に深く関わってくる要素で、なるべくその股関節に負担をかけまいとするフォームを採用するのは当然でしょう。
しかし筋肉の質が違うメジャーリーグの選手などは立ち投げでも問題ない場合が多いですが日本人選手の場合は下半身を使わず腕に頼って投球すると肩、肘への負担が大きくなりがちで、おそらく斎藤佑樹もこれによって肩を負傷してしまったと思われます。
立ち投げっぽいフォームで投げていた中日の浅尾拓也選手も肩に大きなケガを負って全盛期のフォームは未だ取り戻せていない状況です。
いずれにしても投手にとって重要な箇所である股関節と肩に重大な疾患を抱えてしまった斎藤佑樹は2013年から2016年までで投球機会が激減し、この4年間でわずか3勝しか挙げられませんでした。
2017年の斎藤佑樹は技巧派に?復活の可能性あり
マイペースで知られる斎藤佑樹ですが、2017年には中田翔なども手掛ける大物トレーナーケビン山崎氏のジムに通い今まで以上に肉体改造に力を入れています。
そして5月31日の横浜ベイスターズ戦で登板、5回を投げて無失点(6回にランナーを出して交代、自責点1)という悪くない内容で623日振りの勝利を挙げました。
ストレートの球速は138kmくらいと高校時代には程遠い球速ですが、近年悩んでいたコントロールはずいぶん改善され四球はゼロ。
甲子園史上2位の奪三振を奪った要因の一つストレートとスライダーは控えめにしてシュートとフォークを低めに集め、ゴロを打たせて打ち取るベテラン技巧派投手のような軟投を見せました。
また打球をゴロにしやすいツーシームやカットボールも以前よりキレが少し増しているのでこれも悪くないですね。
変化球をコントロール良く低めに集められているのが安定した投球ができた理由だと思います。
斎藤佑樹の負ったケガを考えればもう高校時代の球速を望むのは難しいとは思いますが、このように変化球を低めに集めるスタイルが上手く続けばローテーションに入ってもおかしくない程度の投球はしていると思います。
日本ハムは現在先発投手不足に悩んでいますから救世主になるかも?言い過ぎ?