2017年トレード期限日となる7月31日に北海道日本ハムファイターズの谷元圭介選手が中日ドラゴンズに金銭と引き換えにトレードされることが電撃的に発表されました。
谷元選手といえば通算100ホールドを記録し、2016年の日本シリーズ優勝時には胴上げ投手も務めた日本ハムファイターズ中継ぎのエースです。
すでに32歳になっているとはいえまだまだ衰えは見せておらず、日本ハムがこれほどの功労者をトレードで放出するを決断したことに日本ハムファンからは落胆の声、中日ファンからは「本当にもらっていいの?」と歓喜と驚きの声が聞こえてきますね。
もともと日本ハムは選手の査定にかなり厳しい球団であることはよく知られていますが、なぜここまでシビアなのでしょうか?
日本ハムは高年齢選手にシビア!
これまでもベテランをあっさり放出してきた日本ハム
北海道日本ハムファイターズは今回の谷元圭介選手のケースに限らず、これまでにも驚くような選手取引を幾度となく見せています。
2009年には稲田直人、2010年には江尻慎太郎、2011年には高橋信二、2013年には外野手でトップクラスの実力を持つ糸井嘉男、2016年には若手の有望株石川慎吾選手とパ・リーグMVPを獲ったこともある吉川光夫選手といった実績のあるベテラン選手達(石川は若いけど)をあっさりとトレードで放出しています。
2017年にはその年に獲得した新外国人エスコバーを7月にこれまたあっさりトレードで放出するなど大胆な決断を下していますね。
また森本稀哲や小谷野栄一、陽岱鋼といったFA権を得たベテランを引き留める事にも積極的でなく、年棒などを上げることなく移籍させています。
2011年にはそれまでメジャーリーグにあまり興味を抱いていなかったダルビッシュ有をポスティングでメジャーにも送り出していますね。これだけ実績のある選手ですから当然ですが、当時のダルビッシュ有は年棒5億円で日本ハム的には支払いが限界に来ていました。
この様に日本ハムファイターズはかなり金銭面や選手の査定にかなりシビアで、谷元圭介選手のようなベテランはあっさりと放出されてしまうことも珍しくないのです。
・日本ハムはこれまでもベテランにはシビアだった
・FA権を行使しようとしてもあまり引き留めない
日本ハムが高齢選手にシビアな理由は?
日本ハムは経営が楽じゃない!
日本ハムが高齢選手の査定に関してシビアな理由としてはやはり金銭面での問題があるでしょう。
大きな負担となっているのは本拠地である札幌ドームではないでしょうか。
詳しくはこちらのシリーズ→日本ハム球場移転①札幌ドームの問題点は?で書いていますが、札幌ドームは維持費が高く、札幌ドームで販売しているグッズや飲食物の売り上げが日本ハム側にほとんど入ってこない仕組みになっています。
そのため資金繰りが楽ではなく、どうしても定期的にコストカットせざるを得ない状況なのです。
2008年、2010年、2013年、そして現在2017年がそうであるように、日本ハムファイターズは優勝した翌年に大きく成績を落とすことがあります。これは優勝によって膨れるであろう選手の年棒を払いきれない可能性があるため、主力選手をドンドン放出していく事が原因だと言えるでしょう。
加えて今回の谷元選手の場合、谷元選手がFA権を取得していたという事も理由の一つになっていると思います。FAはお金があまり発生しないので、であればFA権を行使される前に金銭と引き換えに売ってしまおうということでしょう。
こういった札幌ドームなどの金銭的な負担があるため、現在日本ハムファイターズは新球場を作ろうという構想を立てているのです。新球場が建てられることはほぼ確定的なのでそうなれば収入も上がり(もちろん新スタジアム建設費用も掛かるけど)、経営形態も変わってくるのではないでしょうか。
こちらも参考に→日本ハム球場移転⑤「天然芝」「開閉式」球場は可能か?
日本ハムの経営はメジャー流!?
今回の谷元選手の件のようなある種「非情」とも取れるドライな経営はメジャーリーグでは一般的です。
実際日本ハムファイターズの経営陣にはメジャーリーグの経営を経験してきた人がたくさんいます。
現GMの吉村浩氏は元デトロイト・タイガースのGM補佐、大渕隆スカウト部長は元アメリカIBMの社員、ディレクターの岩本賢一氏もアストロズの職員でした。球団代表である島田利正氏もヤンキースで働いていたことがあるそうですね。さらに現在GM補佐として働いている木田優夫氏はタイガース、ドジャースで活躍した元メジャーリーガーです。
こういった「メジャーリーグ流」の経営方法を実際に学んだ人たちが日本ハムファイターズの指揮を執っているので現在のようなシビアな経営になるのは当然といった所でしょう。
通称「BOS(ベースボール・オペレーション・システム)」という選手のプレーを数値化して評価するデーターベースを日本で最初に導入したのも日本ハムですし、北海道という地域に密着するスタイルや、斎藤佑樹を開幕投手に指名したり大谷翔平を優勝決定戦でクローザーに起用したりメジャーリーグのようなショー的要素も積極的に取り入れています。
日本ハムはNPBの球団の中では最も「メジャー的」経営を行っている球団であることは間違いないでしょう。そうなるとやはり選手への査定はある程度シビアかつドライになるのは仕方ないかもしれません。
若手を重視していくスタイル
そんなメジャー流にドライな日本ハムの経営ですが、若手選手には非常に優しく、重視する球団でもあります。これもベテランをあっさり放出する理由の一つになっているでしょう。
有望な若手が居れば、多少成績が残せなくても我慢して使い続けるので日本ハムは有力な若手選手が頻繁に登場します。
中田翔選手や西川遥輝選手、中島卓也選手などもそういった流れからチャンスを掴んだ選手ですね。2017年に巨人からやって来た大田泰示選手もキャリアハイの成績を残すなど巨人時代とは違ってノビノビプレーできています。
ドラフト下位で指名した選手が有力な戦力になるのも日本ハムというチームの特徴ですね。
環境も良く、ダルビッシュや中田翔など素行に問題のあった選手にもきちんと教育を施し成長させます。中田は今やすっかり若手の兄貴分ですし、パチンコ屋でタバコを吸っていたダルビッシュは今ではメジャーのオールスターにも選出されるほどの筋肉健康オタクと化しています。
これだけ主力選手を放出し続けながらかつ幾度も優勝するのは育成力があってこそでしょう。
日本ハムは育成力が高く、若い選手がどんどん頭角を現すのでベテランをキープしておく必要があまりないのです。実際に陽岱鋼選手と最後の交渉を行った際は「卒業おめでとう」とポジティブに声を掛けたようにいかに日本ハムが若手選手とのバランスを重視していることが分かりますね。
・札幌ドームの絡みなど日本ハムは球団経営が楽ではない
・メジャーリーグ経営経験者が多数
・育成力が高いためベテランをキープする必要がない
日本ハムは若手には優しくベテランにはドライ
今回の谷元選手の件をあまりにも「非情」だと非難する声は多いです。確かに優勝に貢献した功労者への対応としては寂しい部分も大いにありますね。年棒の高いベテランにドライな球団であることは間違いないです。
しかしその分若手には必要以上にたっぷりと愛情を注ぐ球団でもあるのでそことのバランスをファンがどう見るかですね。
放出されたベテラン達はみな引退後、日本ハムのコーチ陣として活躍したり、しょっちゅう北海道に戻ってきて解説の仕事などを行っているので、経営がドライだからといって決して環境が悪いわけではないのでしょう。
谷元選手も地元中日への移籍ということなので頑張ってもらいたいです。もしかしたらいつかスタッフとして戻ってくるかもしれません。